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第0章
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冬から春への季節の変化は穏やかだった。 秋を蹴り飛ばしていきなりやってきやがった冬とは違い、変温動物の体調もしっかりいたわりつつ、いまだ寒い日はあるものの徐々に小春日和な日が増えていた。 つってもまあ、窓際にいる俺には昼間に十分日が差し込むように計算された設計の建築のおかげで晴れた日にはずっと日光が直撃しているのであり(ちなみにカーテンを閉めると後ろにいるやつが「ビタミンDが作れないじゃないの!」とか意味不明なことをいって即座に全開にする)、結局教室にいる間は冬だろうが春だろうがあんま変わらないんだけど。暖房もあるし。 そのとおり気温はそんな変わらないはずなのだが、しかし重要なのは気温ではないらしく、俺は春の陽気に心地よくなりうとうとしていた。もう、今何の授業をしているのかもよくわからん。たしか、内容のうっすいどうでもいい科目だったような気がする。 何が違うんだろうな、冬と。 日差しの成分がかわるのか、それとも精神的な問題なのか、それとも人体にはるか昔から組み込まれている体の周期の問題なのか……まあこれもどうでもいいな。 …… そろそろ眠気もピークに達しようとしていたため、いっそもう本気で眠りに落ちるか、と体勢を安定させて、俺は眼を瞑った。 … その時だった。 いきなり俺の襟首に手がかけられ、ものすごい力で思いっきり引っ張られると同時に脳裏に一学期のあの時の記憶がよぎり、あれっもしかしてこれが走馬灯?とか思った―――気がしたがそれは気のせいで実際には何がなんだかわからないうちに―――俺は半年と数ヶ月ぶりに机の角に頭を強打し、鼻の穴の奥の奥のほうで10円硬貨が炸裂したみたいな匂いがした。 「ってえなこの野郎!!」 俺は眠気のことは完全に忘れ猛然と振り返った。 もしここで後ろにいるやつがただのクラスメート―――つまり、ただたまにどうでもいいことをしゃべったり社交辞令で行動を共にしたりするだけの仲―――だったらこのセリフの後即座につかみかかりにいくところだ。 だが、上記のように述べたということはつまり、振り返った俺の眼前に厳然として存在する人物は お世辞にもただのクラスメートといえるやつではない、ということである。ただしだからといって別に親友ではないし、尊敬してるわけでも崇めているわけでもない。ほんと、こいつは俺にとっての何なんだろうな。 そこには机から身を乗り出し超新星1987Aをも凌ぐ輝く笑顔を絶賛放出中の、涼宮ハルヒがいた。 今頃カミオカンデでは大量のニュートリノが検出されているかもしれない。 「気がついたっ!!」 ハルヒはつばを飛ばしながら叫んだ。 デジャ・ヴ。 「お前な…・・」 「なによ。今回は授業中じゃないわよ?もう休み時間なんだから、ちゃんと聞いてもらうわよ、この私の発見を。」 「…なに?」 休み時間? そう思ってあたりを見回してみると、なるほどたしかにもう休み時間であった。 俺はまだ寝ていないつもりだったのだが、どうやら眼を瞑ってすぐ寝てしまったらしい。終了の挨拶をしない授業…・てことは、あの科目か。やっぱ聞かなくてもいい科目だったな。だが問題はそこじゃないだろ。 「もうちょい優しく起こせないのか、お前は。俺は別に後頭部をうたなくても揺すってくれれば起きる。」 「最初はつついたりしたのよ?でもあんた爆睡して全然起きないから、しょうがないから襟をガって引っ張ったわけ。そしたら、ガンって」 ガンって、じゃねえだろ。俺がボクサー脳症みたいになったらどうするつもりだ。責任取れんのか? 「私のせいであんたが怪我するようなことがあるなら、私が責任を持って治療してあげるわ。安心しなさい。」 「……いや、それならすぐさま病院に連れて行ってくれ。頼むから。」 俺は溜息をつき、そして先ほどのハルヒの発言の続きをきくことにした。 どうせまたなにかやりたい行事が出来たんだろう。そして俺らがまた苦労を強いられるわけだ。 だが、最近こんなハルヒの気まぐれが、俺にとってただ大変なだけの行事ではなくなってきたということも、もう何度も言っていることだ。それは既に俺の日常の一部であり、…・・もしかしたら、このまま続いてほしいと願っているものなのかもしれなかった。 ただし、それが世界の命運とか俺らの命運とかに絡まない限りの話だが。 「で、今度は何に気づいたって?」 「ないんだったら、作ればいいのよ!」 何をだよ。部活…というかクラブはもう作っただろ。 ハルヒはチッチッチと舌を鳴らしながら指を振り、そしてこう言い放った。 「タイムマシンよ!!!」 |